| ワインのガイド集 フランス編 >> 2002年もの |
2002年もの
2003年ものとはこちらは違って2002年のヨーロッパでは多くの地域が大雨に見舞われました。2003年の夏の記憶が生々しいだけに、その前年続々と届いた洪水の報告は遠い出来事のようにも思われますが、文字通り葡萄畑を丸ごと押し流された人はこの年を忘れようにも忘れられないはずです。
灰色の冷たい空からそぼ降る雨に呪われたかのような2002年のヨーロッパでは、葡萄は永久に熟することがないかに見えたくらいです。あたかも空前絶後の陰鬱な収穫年に向かって歩んでいるかのようでもありました。
実際、一部の地域ではそのようになりました。例えば、イタリアのピエモンテに住み、ドルチェットかバルベーラで生計を立てている人たちにとっては、はずれ年でした。しかし、ネッビオーロは小春日和が幸いして、ずば抜けた出来となり、2000年ものや2001年ものとは比べればやや酸味が強く、力の点で劣るとはいえ、優良でした。
冷夏と雨の影響はトスカーナの赤に顕著で、期待するとしても、せいぜい完熟したタンニンを持つかなり軽いワインと言ったところです。それに対して北部のトップクラスの白は実に優良で、例えば明らかに2000年ものには欠けていた爽やかさとバランスを備えています。収穫量の減少は悪いことではありません。困難な年には、収穫は少ない方が完熟させやすいからです。
小型の収穫はボルドーでも鍵でした。8月をアルカションの浜辺で寒さに震えながら過ごしたボルドーの人たちが戻ってみれば、そこには一様にみじめな葡萄畑が有りました。それでもなんとか9月10日から空模様が変わり、小春日和のおかげで、きちんと熟した葡萄も中にはあるが、遅きに失したといってもよいでしょう。だからこそ、収穫量が重要だったのです。タンニンに成熟に時間がかかり、太陽が戻るのが遅れたため、厳しい選別を行ない、収穫量を抑えて初めて完熟させることが出来ました。
収穫量が多いとタンニンが未熟なままに終わり、よほど醸造に神経を使わないとエキス分の過剰抽出となるケースも出ました。結果的に出来が良かったのはカベルネで、メドックのトップクラスの呼称区域では、バランスがとれてエレガントな、模範的なワインもいくらかできました。ただし、あたかも絹のようにやわらかく口の中でとろけるようなタンニンを望む向きにはオススメは出来ません。
それに対して、辛口の白は上出来でした。きびきびして爽やかで、酸味も充分あり、フルーティーさにも不足はありません。貴腐の進行および広がりがまちまちだったために、ソーテルヌは畑によって品質にばらつきがあるが有望です。
ブルゴーニュは飛びっきり上質の収穫年になりました。2004年初頭の最初のティスティングの結果は、完璧なバランスをエレガントさを示しています。ぴたりと焦点が定まり、すばらしい芳香に満ちた、フルーティーで魅惑的なきめを持つワインです。ある産出業者曰く、ピノ・ノワールに関して2002年は、「テロワールが前面に出た年」だった。個々の畑の違いがはっきり舌に感じられる。シャルドネは芳醇で申し分ない酸味も備え、若いうちからこの上なく魅力的だが、充分中期に熟成に耐えるだろう。と。
ローヌ河流域北部、南部については、「困難な年」だったというしかありません。「まったく手に負えない」年だったという産出業者も有るだろう。多少なりともまっとうなワインをつくるつもりなら、厳格なまでの選別を行なう他に手はなかったが、出来たワインはとにかく驚くほど魅力的でありました。
かなり軽く、若いうちに飲むに限るが、フルーティーだし、バランスもとれています。選別はいつも報われるものだが、今年こそそれがものをいう年でした。
フランスでは、他にロワールとシャンパーニュからも朗報が届きました。ロワールでは、ミュスカデ区域からサンセール区域まで、赤から甘口の白まで、ことごとく上出来でした。通常年によって出来のよいワインのタイプが異なるこの地方にあっては、まさに快挙といえます。シャンパーニュでは、模範的な年号入りが出来たそうです。第一次発酵を終えた非発泡性ワインがすでに芳醇で豊かなフレーバーを備え、産出業者は1989,1976,1959年にも匹敵すると言っています。
ドイツでも10月の雨までは1976年の再来かと言われていましたが、極上の収穫年のはずが雨にたたられて、思いの外良程度の出来にかわりました。カビネットとシュペートレーゼの当たり年で、それ以上の等級のものは少ない。例外的に、ほぼすべての地方でアイスヴァインは成功しました。
オーストリアに関しても、「予想以上の出来」とみられています。おおかたは厳格な選別と巧みな葡萄栽培のおかげで、雨でずぶぬれになりながらも、ともかく好感の持てるワインが一部現れてきました。甘口の貴腐なワインはことのほか良の出来であります。
新世界に目を転じると、カリフォルニアは順調でした。供給過剰への懸念から収穫量が抑えられたため、フレーバーは強烈で熟したものになりました。
異例の涼しさだったオーストラリアでは、リースリングと、リヴァーランドなど温かい潅漑地域の赤が際立ちました。
サウス・オーストラリア州では100年ぶりの冷夏だったが、幸い秋にその暖かさが戻りました。そもそも暑いこの地域では、冷たい方がかえってワインのアルコール度が抑えられ、申し分ない酸味が得られるのです。
アデレイド・ヒルズなどの高級ワイン産出地域の多くが優良収穫年となったが、開花期の天候不順により量的には大きく落ち込みました。
冷涼な天候はバロッサにも幸いし、いつもより洗練されたワインができたし、クレア・ヴァレー、ヤラ・ヴァレー、マクラレン・ヴェイルのワインも実に申し分ないフレーバーを持ちます。
マーガレット・リヴァーを筆頭にウェスタン・オーストラリア州でも、申し分ない酸味と豊かなフレーバーを持つワインが目立ちます。そんな中で不運だったのはハンターで、酷暑の夏が終わったかと思えば収穫期に雨に見舞われ、セミヨンのみが善戦したようだ。
モーニトン・ペニンシュラの収穫量は限りなく少なかった。開花期の低温により、全くワインができなかった葡萄園も有りました。
ニュージーランドは朗報に沸きかえっています。2年続きの不作の後、平年並みの収穫に戻り、小春日和のおかげで赤、白ともに充分完熟しました。
南アフリカはばらつきのある年でした。地域によっては生育期の涼しさに助けられてアルコール度が通常より下がったが、そのあと熱波に見舞われ、白は肥えた感じになりました。次いで再び気温が下がったため、若干の晩熟品種は予想ほどうまく熟さなかった。ある産出業者が指摘したとおり、夏が涼しければそれでよしというわけではありません。ただし、ソーヴィニョンに関しては当たり年でもありました。
チリでは、少なくともクリコ、マウレなどの南部地域は収穫期に雨に見舞われ、赤がやや水っぽくなった可能性があるが、白は被害を免れました。
いずれにしても、雨の影響が見られた地域は限られています。アルゼンチンでは優良収穫年となって、経済危機のため八方ふさがりのこの国のワイン業界を活気づけるのに一役買いました。
ワインたちににとってみれば2002年はこんな年です。
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